複層ガラス

複層ガラス

複層ガラスとはスペーサーと呼ばれる金属部材で、2枚のガラスの間に中空層を持たせたガラスです。
2枚のガラスの間に空気層を挟み込むことによって断熱性能を向上させてあります。

スペーサーを用いて保たれた空間には、乾燥空気を封入してあります。
冷暖房効果の低下や、結露の発生など、熱の移動によって、住まいの快適さを損なう様々な問題が起こります。

複層ガラスは、熱が最も移動しやすい「窓」の断熱性能を高め、それらの問題の多くを解決します。
また、結露などを減少させてくれます。
乾燥空気の代わりにガスを注入したり、真空にして断熱効果を高めたものもあります。

製造工程

素板切断・洗浄・乾燥     スペーサー
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2枚のガラスの周辺部にスペーサーをセット

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封着剤で周囲を密封

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乾燥・養生

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検査

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製品

Low-E複層ガラス 断面図

Low-E:Low Emissivity(低放射)の略で、複層ガラスのうち、その内面部に特殊な金属膜を設けたものをいう。
◇ガラス内面に光を透過し熱を選択反射する特殊金属膜がコートされている。

1:中空層。乾燥中空層が複層ガラスの断熱性能を確保します。
2:アルミスペーサー。ガラスの間隔を保ちます。また、ホロー部には乾燥剤が入っています。
3:乾燥剤。中空層を長期間、乾燥状態に保ちます。
4:封着剤(二重シール構造)
 1次シール(内部側)ガラスとスペーサーのすき間から大気中の水分が浸入されるのを防ぎます。
 2次シール(外部側)複層ガラスの構造を保ち、1次シールを保護します。

■放射率について
 一般的な1枚ガラスが放射率0.85程度なのに対し、
 Low-Eガラスは放射率が0.1以下になるのが普通。
 この放射率が低ければ低いほど、赤外線を反射させ熱を通さない。

材料放射率
アルミニウム0.02~0.1
鉄(酸化面)0.5~0.9
ゴム0.95
セラミック0.95

遮熱型と断熱型 複層イメージ

[遮熱型]
 室外側ガラスに金属膜がコートされていて、太陽熱を反射して熱の室内への流入を遮断する。

[断熱型]
 室内側ガラスに金属膜がコートされていて、部屋の暖房熱を反射して外に出さない。

省エネルギー効果 熱貫流率の表

熱貫流率とは何? 熱還流率

1時間あたり、ガラス1㎡を通過する熱量をワットで表したものが
『熱貫流率(U値)』で、数値が小さいほど断熱性に優れていることを表します。
単位は「W/㎡・K」ワット・パー・ヘイベイ・ケルビン」と読みます。

結露防止効果 [室内温度 20℃、湿度60%]

ガラス種類結露する室外温度
3mm単板8℃
3mm/6mm空気層/3mm-2℃
3mm/12mm空気層/Low-E 3mm-22℃

化学強化ガラスとは?

化学強化ガラスとは?

化学強化ガラスの原理(別名:イオン交換強化)

  • ガラス転移点以下の温度(例えば400°C)
  • 硝酸カリ溶融塩(KNO3)にガラスを浸漬
  • ガラスの表面のNa+イオンが溶融塩中のK+イオンと交換

交換前
歪点以下(400~450°C程度)でNa+とK+のイオン交換を行う
交換後
イオン半径が大きいK+が入ってくるが、骨格に阻まれて広がることができないので表面近傍に圧縮応力が発生する

「Na+」イオン半径0.95Å  < 「K+」イオン半径1.33Å
※オングストロームÅ(10-10 m=0.1nm)

矢印
室温に冷却すると表面に圧縮応力が発生する


物理強化と化学強化の断面応力分布例

化学強化ガラス
化学強化ガラス
物理強化ガラス
物理強化ガラス

化学強化の圧縮応力は物理強化に較べて非常に高く、引張応力は非常に低い。

化学強化ガラスの特徴 抜群の多様性

  • 自然破損しない      :中央引張応力が非常に小さいため、自然破損しない。
  • 優れた機械的強度     :フロートガラス < 物理強化ガラス ≤ 化学強化ガラス
  • 信じられないような曲げ強度:大きく撓んでも割れない
  • 引っ掻き傷に強い     :表面の高い圧縮応力により傷が付きにくい
  • 熱衝撃強度に強い     :薄板はフロートに較べて数倍の熱衝撃に耐える
  • 光学的な歪みがない    :低温処理の為、フロートと歪みの差がない
  • ガラスの変形がない    :低温処理による形状の変化がない
  • 厚さや形状の制約がない  :1mm以下の板厚でも可能 曲げや異形も可能
  • 軽量化          :板厚を下げても同じ強度のガラスが可能
  • 小さい寸法ができる    :物理強化ガラスに較べて寸法制限が少ない

化学強化ガラスと物理強化ガラスの特性比較

項目名化学強化ガラス物理強化ガラス
製造タクト数時間数十分
処理温度(最高)450℃程度650℃程度
光学歪み生板同等若干あり
変形(反り、撓み)生板同等若干あり 0.5%程度の反り
自然破損皆無対策が必要(ソーク、フィルム貼り)
表面圧縮応力(MPa)300~800100~120
中央引張応力値(MPa)非常に低い圧縮応力の約1/2
加工可能な板厚制限無し(3.2mm以下でも可能)制限あり(3.2mm以下は不可能)
加工可能な形状特別な制限は無い肉厚差の大きい製品は均一な強化が難しい

物理強化ガラスとは

物理強化ガラスとは

物理強化ガラスの原理 ガラスを650℃程度に加熱急冷する事によって表面に圧縮応力が発生する。 物理ガラスの原理

加熱終了後は全体が均一温度で均一な長さであり、急冷を開始し両表面が「ひずみ点」に到達して固まると、温度の高い内部は縮むことができないので、縮むのを抑える力(引張応力)が発生し、表面には内部の引張応力に対応した圧縮応力が発生する。

物理強化ガラスの応力分布 圧縮応力 σ:表面が「ひずみ点」に到達した時の温度分布を「放物線」と仮定すると、
        圧縮応力の深さは板厚の1/6となり、圧縮応力は引張応力の2倍になる。

引張応力 σ:ガラス表面に引張応力が働いた場合、圧縮応力に相殺されて、
       直ぐには引張応力が発生しない。圧縮応力の分だけ強くなる。

応力分布

表面圧縮応力測定

◇自動測定により測定者の個人差が無い
◇データが保存されるので品質管理が容易
◇校正用基準器で機差を最小限にできる

強化ガラスの強度(落球衝撃強度) 30㎝角の中心に225gの鋼球を落下

ガラス種類板厚(mm)平均破壊高さ(㎝)
フロート6
8
12
50
55
80
強化ガラス6
8
12
370
520
650

強化ガラスはフロートの7~8倍の強度を持っている

強化ガラスの強度(熱衝撃強度) 7㎝角の試料を0℃の水中に落下

ガラス種類板厚(mm)急冷強さ(温度差℃)
0%破壊100%破壊
フロート3
5
80
60
120
100
強化ガラス5
8
12
170
170
150
220
220
200
強化ガラスはフロートガラスに比べて2~3倍の強度を持っている。

強化ガラスの破砕模様

破砕1
破砕数[40~50ヶ/5㎝□]
破砕2
破砕数[100~200ヶ/5㎝□]

強化ガラスをポンチで割った場合に、引張応力層に蓄えられた弾性エネルギーが高ければ高いほど、細かい破砕模様となる。

物理強化ガラスの自然破壊 ガラス中のNiS (0.05~0.3mmΦ)
NiSの結晶相
 α-相 : 396℃以上
    体積 81.05
 β-相 : 396℃以下
    体積 84.33
 α から βへ転換(月単位~年単位)
    NiS が引張応力域に存在すると体積膨張による自然破損の可能性がある。

ガラスの強度および破壊

ガラスの強度および破壊

ガラスの強度 ぜい性破壊
ぜい性破壊の特長
①強度の測定値はバラツキが大きい
 形状、表面の傷、熱処理不良等で変動する
②多くは表面から破壊する
③引張応力によって破壊する

ガラスの強度=破壊した時の表面の引張応力

理論強度と実用強度 [理論強度]引張方向の原子間距離(20Å)から 1×104MPa

[実用強度]1×102MPa ➡ 理論強度の1/100程度

[グリフィスの理論]ガラス表面に微細な欠点 ➡ 引張応力下の応力集中による破壊と仮定
          試料サイズの大きいものほど強度が低い ➡ グリフィスクラックの確率
          1960年代
          フッ酸処理によって表面層を十分取り除いた試料
          1×103MPa

衝撃破壊 落球破壊:1,040±10gの鋼球を落下させ、平均破壊高さを落球強度と呼ぶ。

応力分布 落球強度の低いもの
破砕パターン(A)
落球強度の低いものは粗い破砕模様
落球強度の高いもの
破砕パターン(B)
落球強度の高いものは細かい破砕模様

ガラスの割れる面 薄板と厚板の違い

薄板 厚板

曲げ強度 4点曲げ強度測定治具 [EN-1288-3-2000準拠]

magesokutei.jpg 曲げ強度測定

4点曲げ試験
4点曲げ試験
破砕パターン
破砕パターン

面内強度[同心円法] 同心円負荷曲げ試験の概念図

mennnaikyodo 面内強度測定

同心円曲げ試験
同心円曲げ試験
破砕パターン
破砕パターン

熱衝撃強度 7㎝角の試料を0℃の水中に落下

ガラス種類板厚(mm)急冷強さ(温度差℃)
0%破壊100%破壊
フロート3
5
80
60
120
100
強化ガラス5
8
12
170
170
150
220
220
200
強化ガラスはフロートガラスに比べて2~3倍の強度を持っている。

素板の平均強度 motoitakyodo

ガラスの種類と組成

ガラスの種類と組成

ガラスの種類は非常に多く、それを化学成分、製造方法などで分類しています。
ガラスを構成する材料の種類や割合の違いにより、特長を活かして様々な用途に使われています。
以下、代表的なガラスをご紹介します。

「ソーダ石灰(ソーダライム)ガラス」建築用ガラス 建築物の窓ガラス、コップなど多くの食器類などに使われる一般的なガラス、当社が取り扱うのは主にこのガラスです。
けい酸(SiO2),ソーダ(Na2O),石灰(CaO)を主成分として、最も生産量が多いガラスです。
なおソーダというのは、ナトリウム 化合物の略称です。

組成含有量備考
珪酸(SiO270~74%主成分
アルミナ(AI2O30~2%硬度増加
石灰(CaO)6~12%耐水性増加
マグネッシャ(MgO)0~4%耐水性増加
ソーダ(Na2O)12~16%溶融性向上

「鉛ガラス」X線遮へいガラス X線検査室でX線の遮へいのほか、高級食器などにも使われるガラスです。
けい酸(SiO2),酸化カリウム(K2O),酸化鉛(PbO)を主成分とした比重が重く、柔らかいガラスです。
ソーダ石灰ガラスに比べて屈折率が高いので、光学用ガラスや装飾用ガラスに使用されます。

「ほうけい酸ガラス」耐熱ガラス 理化学容器や耐熱ガラス容器、自動車のヘッドライトなどに使われています。
理化学用ガラスとも言われけい酸(SiO2),ソーダ灰(Na2O),アルミナ(Al2O3),酸化ほう素(B2O3)を主成分としています。ソーダ石灰ガラスに比べ、熱膨張係数が小さいので熱衝撃(急激な温度変化)に強いです。また絶縁性,耐酸性が強いという特徴も持っています。

「結晶化ガラス」ニューガラス 透明防耐火ガラスなどに使われています。
けい酸(SiO2),アルミナ(Al2O3),酸化リチューム(Li2O3),酸化チタン(TiO2),ジルコニア(ZrO2)を主成分とし、ガラスとして溶融したものを成形後に再び加熱して、ガラスの中に細かい結晶を析出したものです。結晶の大きさで陶器状のものや、透明なものがあります。組成によっては、膨張係数をゼロやマイナスにすることができるので、急熱急冷に強いガラスとして活躍しています。

「石英ガラス」高純度ガラス 半導体精製容器や、高密度半導体を製造する時に必要なフォトマスク基盤(※1)などに使われています。
古典的な製法では、ほぼ100%のけい酸(SiO2)である水晶や石英の粉末を、2,000℃以上で溶融冷却して製造します。純度の高い石英ガラスを製造する場合には、四塩化珪素 (SiCl4) の気体から化学気相蒸着 (CVD) によって製造します。ほうけい酸ガラスよりもさらに熱膨張係数が低く、不純物がないため、熱に強く透明性が高いガラスです。 紫外線透過率が高いので、レンズやプリズムに適しています。

※1 「フォトマスク」とは、半導体基板に回路を転写する際の原版(ネガ)にあたるものです。高純度・高精度の石英ガラス上に電子ビームを使って精密な回路パターンが描画されています。

ガラスとは?

ガラスとは?

ASTM(※1)によるガラスの定義
  結晶を析出(※2)することなく、溶融体が冷却・固化された無機物
  金属のような「結晶体」と対比して「非結晶体(アモロファス)」と呼ぶ
  ※1 ASTM(American Society for Testing and Materials:米国試験材料協会)
  ※2 溶液またはガス体から、固体が分離して出てくること。  

製造上の特長

1.均質材料の大量生産 原料を溶融、冷却するだけであるので、均質なものが大量に得られやすい。
2.広い組成範囲 結晶質に較べて広い組成範囲が得られる。
3.微量成分溶解 各種微量成分を構造中に含有させられる。
4.各種成形法 粘度の温度変化を利用し、吹き加工、引張加工、鋳型加工などの成形法を適用でき、板,管,繊維状でμm単為からm単位まで種々の寸法に成形が可能。
5.成形後の加工 研削、研磨、結晶化などの変質も可能。

材料物性上の特長

6.均一・透明 原料を溶融、冷却するだけであるので、均質なものが大量に得られやすい。
7.非反応・不透過 化学的には比較的安定で、耐候性が良く気体や液体を通しにくい。
8.脆い固体 常温では永久に変形しないが、割れやすい。
9.電気絶縁性 普通は常温で電気を通さず、高温ではイオン電導性が顕著。
10.耐熱性 比較的高温まで軟化変形しない。